自社株式の相続税納税猶予制度
前回触れました納税猶予制度とは、相続により取得した自社株式の発行済株総数の2/3に達するまで(相続前から取得した株式を含めて)の8割を納税猶予するというものです。この8割と言う言葉が独り歩きして、どんな場合も8割引かれるイメージを持ってしまうのですが、よく読めば最大でも2/3に達するまでです(従って、全体の評価額からみれば、2/3×8割、最大で53%の値引きです)。しかも相続前に後継者が自社株を1/3所有していたら、8割の納税猶予ができるのも残りの1/3までです。それでも、従来の制度とは随分と異なった制度です。株式の評価額が巨額の場合には実にありがたい制度となるでしょう。しかし、どのような自社株式の相続でも、この制度の対象となるわけではありません。実に様々な要件があります。
@ 被相続人の要件
·その会社の代表者であったこと
·その会社の発行済株式総数の過半数を所有し(同族関係者と合わせて)、かつその同族関係者の中で筆頭株主であったこと
A 相続人の要件
·その会社の代表者であること
·その会社の発行済株式総数の過半数を所有し(同族関係者と合わせて)、かつその同族関係者の中で筆頭株主であったこと
B 適用対象会社の規模要件
資本金 従業員数
製造業その他 3億円以下 又は 300人以下
卸売業 1億円以下 又は 100人以下
小売業 5000万円以下 又は 50人以下
サービス業 5000万円以下 又は 100人以下
C 経済産業大臣の認定手続き
この特例を受けるために必要です。
D 申告期限後の5年間の継続要件
以下の要件を相続税の法廷申告期限から5年間のうちに充足しなくなった場合は、納税猶予額及びそれに対応する利子税の全額納付をしなければなりません。
·代表者であること
·雇用の8割以上の継続
·相続株式の継続保有
5年経過後に、株式を一部売却した場合には、譲渡株数に割合に応じた納税猶予額及びそれに対応する利子税を納付しなければなりません。
特にDは結構大変かもしれません。病気や事故などで自分の意思ではどうすることもできない場合もあるでしょう。